先日、凱旋門を宝塚大劇場で観劇してきました。
私は、最近宝塚に興味を持ち始めた新参者。
出演する俳優さんたちの名前や物語のあらすじも下調べも一切なしで観た感想ですので、長年の宝塚ファンの方々には何の参考にもならないかもしれません。
しかし、「よく分からないけど、知り合いに誘われたから行ってみる」「チケットが手に入ったから行ってみようかな」程度に考えている人が、凱旋門とガートボニートを10倍楽しめるかもしれない方法をご紹介します。
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第一部「凱旋門」を観た感想
「凱旋門」に関しては、第二次大戦前のパリを舞台とするお話。
恐怖と不安が時代を覆う中、ドイツから亡命してきた外科医のラヴィック、イタリアから亡命してきた女優志望のジョアンの恋愛を軸にストーリーが展開していきます。
戦争へと向かう社会の流れと、2人の恋の行方が重なり舞台の最初から最後まで重い空気を漂い、私はどんよりとした気持ちになりました。
ストーリーの合間に入る脇役のコミカルなシーンも一層、暗さを引き立たせているような感じでした。
第一部「凱旋門」の見どころ
この作品の見どころは、「芸術性の高さ」だと思いました。
高度な舞台演出は、「タカラヅカ」という芸能がお好みでない人でも見応えがあるはずです。
特に、
最初から最後まで幕が下りないシーン展開。
客席が動いているかのように錯覚させる舞台装置。
パリの街の一角にいるような雰囲気作り。
シャンソンの歌と雨の演出がよくできている。
などです。
これらは、舞台芸術を余すところなく堪能させてくれるでしょう。
新大久保にある「グローブ座」が、ジャニーズ事務所の管轄になる前に、海外の劇団を招致してシェイクスビアのお芝居をやっていた頃に観た舞台がフラッシュバックしました。
舞台と観客が一体となる感覚とでも言うような不思議な空間を作り出しています。
「凱旋門」についてのファンたちの意見など
今回、主演のラヴィックを演じた轟悠さんは、18年前にも凱旋門で同じ役を演じ、文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞したようです。
ラヴィックのダンディな男性の魅力がたっぷり出ていましたし、どっしり構えた感じの安定感を感じました。
女性なのに、ここまで男性の色気を出せるのか?
舞台最後列から観ていた私にも、その色気は充分伝わってきました。
ただ、あとで知ったのですが、轟さんは、現在の雪組のトップではなく、今回、ドアマンであるポリス役を演じた望海風斗さんが現在のトップだそうです。
この点は、宝塚ファンの方々の納得のいかないところで賛否両論あるようですね。
また、ラヴィックの恋愛のお相手のジョアンを演じている娘役トップスターである真彩希帆さんについても、「彼女の魅力が引き出せていない役」だという声もありました。
真彩さんの魅力は、太陽のように明るい存在感があるのに、今回の役のジョアンは、思い詰めるタイプ。月のような役柄であるため、本来の魅力が出し切れていないようです。
この点は、観る前に押さえておくと良いかもしれません。
更に、「なぜ、戦争物をやる必要があるのか?」
という意見もありました。
暗いお芝居を観に、わざわざ劇場に行く必要があるのか?
と言うことです。
凱旋門の演出と振り付けをされた謝珠栄氏がパンフレットに次のように記しています。
「平和で豊かな日本に住む私達には、非現実的な話に思うが、世界にはこの物語に登場する人間達の様に、恐怖と不安を抱えて「明日がくるのか・・・」と思い生きている人が多勢いる。グローバルな社会になっているからこそ、「共に生きる」ことを見つめなければ成らないと思う」(パンフレットより)
「凱旋門」のあらすじを頭に入れ、出演される俳優さんたちにまつわるこれらのエピソードを調べてから観てみることをオススメします。
第二部「ガードボニート」を観た感想
第一部「凱旋門」の暗さとは打って変わり、第二部「ガートボニート」は明るく、お祭りのようでした。
この妙に高いテンションは、第一部の暗さがあってこそ味わえるもので、第一部の暗さは、第二部の明るさを味わうためにあったのではないのか?と思うほど。
「凱旋門」が人生の地獄を表しているのであれば、「ガートボニート」は人生の天国を表しています。
その意味も「美しい猫のような男」。雪組トップの望海さんのイメージから、演出を手がけた藤井大介氏が作りいだした世界です。
雪組のメンバー総出演で、舞台の端から端まで、
目が二つでは足りない
と言うくらい、役者さん達が縦横無尽に動いていました。
1時間の作品の中に、24場面も盛り込まれていて、サンバカーニバルやダンスをたっぷり楽しめます。
AKBや乃木坂、ジャニーズ、マツケンサンバなどテレビで人気のタレント達を総勢集めても太刀打ちできないほどの迫力。
年末のNHK紅白歌合戦のトリで、大御所達を集めて100回やったくらいのきらびやかなステージ。
あの1時間は軽い電気ショックをかけられたかのような感動で心が震えました。
「あー来て良かった!」
「観て良かった!」
「また来よう!」
「何回でも観たい!」
もし、生まれ変わって許されるなら、男役の中でスーツを着て一緒に踊りたい~
素直にそこまで思ったのでした。
こっちが宝塚の本流でしょうか?
第一部の「凱旋門」でズドーンと暗く落としておいて、第二部の祭りで最高に楽しむ。
このお祭りを存分に楽しんでキラキラした残像をお土産に持ち帰り、日常生活で何度もそのお土産を引き出して余韻に浸る。
そんな時間だったなと思います。
「宝塚ってどこが良いの?」
「何であれだけ人気なの?」
と、冷めた目で見ている人でも、宝塚の魅力が何となく分かってくる作品だったのではないかと思います。
少なくとも私は宝塚の沼に片足を突っ込んでしまいました。
もっと観たい、知りたい、はまりたいと思ったのでした。
この舞台を観て思ったのですが、現在の芸能界は宝塚から色んな要素を持ち出して作られているのではないかと。
特にアイドルと演歌の舞台。この二つは、全く違う世界を見せていますし、ファンも全く別々なのですが、その源流をたどると宝塚に行き着くのではないかと推測されます。
芸能界が大好き、テレビっ子、歌番組が好き
この三拍子あれば、濃厚な3時間で、どっぷり「タカラヅカ」を味わえるはずです。
ぜひ、この機会にタカラヅカを体験してみましょう!!