「時が止まった部屋、遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし」では、著者である小島美羽さんが作ったミニチュアを写真で紹介しながら、孤独死の現場の様子などを伝えています。
小島さんは、孤独死した人の部屋を掃除する特殊掃除人のお仕事をされています。
この本の概要と、私が読んで思ったことをご紹介します。
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「時が止まった部屋、遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし」の概要
小島さんが、特殊掃除という仕事を始めたきっかけは、実のお父さんを孤独死寸前で亡くされた経験からでした。
22歳で仕事を始めたとき、一番最初に特殊掃除の仕事をしたのは、彼女と同じ年の22歳の男性が亡くなった部屋。
その彼が発見された時は、死後3ヶ月経過していたそうです。
孤独死というと、職もなく、病気がちな「中高年」のイメージが強かったのですが、20代~30代のケースも多いようです。
彼らは、会社に勤務したとしても、非正規雇用または、その会社がブラック企業である場合、突然出社しなくなっても、「無断欠勤した」「フェイドアウトした」「辞めたのだろう」と思われてそのまま放置。
誰も心配して訪ねてくることもなく、発見が遅れてしまうようです。
ミニチュアだから直視できる、その現場の様子とは?
孤独死の現状については、話には聞くものの、その様子は、想像や憶測しかできませんでした。
写真で見せられたら、恐らく目を反らしていたと思います。
ミニチュアという、柔らかいツールだからこそ、その現実を直視することができました。
それは、想像以上に悲惨な状態にただただ驚くばかりでした。
ゴミ屋敷状態になっている部屋もあれば、何もない部屋もあったり、高級マンションの一室という部屋もありました。
そこで孤独死された人は、社会から孤立した人もいれば、成功者として裕福な生活をしている人まで様々です。
死体が発見された場所はどこも、赤茶色の体液が人型に染みつき、亡くなる寸前の状態まで想像できました。
孤独死の現場で最も、無残な状態で発見されるのは、自動で追い炊きできる機能が付いたお風呂の中です。
42度くらいに設定されているお風呂の中で亡くなってしまうと、湯の温度が下がらず、発見時まで延々と遺体を煮詰める状態になるため、ドロドロに溶け出して、その姿が分からなくなってしまうようです。
一人暮らしをするとしたら、自動追い炊き機能のお風呂は止めた方が良いかもしれません。
「時が止まった部屋」の読後感
この本を読んで一貫して感じたのは、本の著者であり、ミニチュアを作った小島さんの心でした。
ミニチュアは、悲惨な現場を正確に再現しているのですが、一つ一つが柔らかく暖かいのです。
文面の一行一行には、故人や周囲の人たちへの愛情がにじみ出ていました。
おどろおどろしい現場の中で、故人の生前の思いを巡らせ、その気持ちをくみ取ろうとしているスタンスは、私よりも遙か年下とは思えないほどしっかりとして慈悲深く、何度も心を揺さぶられました。
現場の作業を完了させ、その場を立ち去る前に、小島さんは、その部屋に、お線香を焚き、仏花を手向けるそうです。
それは故人が慣れ親しんだ部屋の最後を締めくくるためであり、遺族の気持ちに区切りを付けるため。
なぜそこまでするのかは、故人のことを家族のように思って作業しているから。
読んだ後も、小島さんの凜とした愛が伝わってきて、何度も読み直してしまいました。
久々に愛情に満ち満ちた本を読みました。
何度も読みたいと思えるような本です。是非、手に取ってお読み下さい。